会社概要と統合モール発足、その課題
株式会社TSIホールディングスは、アパレルを中心に50以上の多種多様なブランドを展開するファッションエンターテインメント創造企業です。同社が運営する公式オンラインストア「mix.tokyo」は、30以上のブランドが集結した統合モールとして成長を続けています。 しかし、多数のブランドが集約されたことで、ブランドごとの文化や商材の違いから分析指標が属人化し、共通認識を持ったUX改善や効果検証が困難になるという課題に直面していました。 同社はこの課題を解決すべくContentsquareを導入。 「感性とデータの融合」 を掲げ、単なる制作受託チームから「体験設計のパートナー」 へと組織の変革を推進しています。
いかにデータを共通言語とし、ブランドの世界観を守りながら具体的な業績向上・顧客体験改善へと繋げていったのか。現場を牽引するキーマンにお聞きしました。
【お話をうかがった方】
株式会社TSI デジタルビジネス統括部 コンテンツマーケティング課 課長 竪川 翔太氏
株式会社TSI デジタルビジネス統括部 コンテンツマーケティング課 関河 真歩氏 ※ご所属・役職は2026年7月時点のものです。
30以上のブランド統合が突きつけた、指標共通化と「感覚頼み」の壁
── サイトは貴社の中でどのような位置付けでしょうか?
竪川氏:「MIX.Tokyo」は、TSIグループの30以上のブランドが集結したモール型ECサイトです。それぞれのブランドが持つ強い個性を生かし、お客様が新しい自分やライフスタイルに出会える場所を提供できるよう運用しています。
関河氏:私たちの所属するコンテンツマーケティング課には17名のメンバーが在籍しており、「企画・PM」「デザイナー」「フロントエンドエンジニア」の3つのチームに分かれています。企画から実装、効果検証までを一気通貫で手がけています。
単に依頼を受けて作る「受託チーム」ではなく、「ビジネスと感性を両立させる体験設計のパートナー」として、受注売上の最大化を目指しています。KGIには「コンテンツ経由の商品詳細ページPV数」を設定し、チームごとに訪問数や遷移率などのKPIを細かく追っています。

── Contentsquare導入に至った背景や、当時の課題を教えてください。
竪川氏:カートシステムの統合に伴い、複数のブランドが1つのシステムに集約されたことが大きなきっかけでした。当時はGA4などでダッシュボードを作成して計測を行っていましたが、ブランドごとに文化や扱っている商材・価格帯が異なるため、会話の基準となる指標を共通化することが非常に難しい状況でした。 結果として、追うべき指標が属人化してしまったり、ページ内においてどの指標が売上に繋がるのかが不明確なまま「この指標は見られないのか」と、指標を見ること自体がゴールになってしまうようなケースが続いていました。GA4の専門的な数値をブランド担当者に説明しても、意図が伝わりにくいという課題を抱えていました。

「ブランドごとに文化や商材が異なる中で、同じ指標を用いて共通の会話をすることが極めて困難でした」(竪川氏)
追うべき指標を絞り込み、データを組織の「共通言語」に変える
── Contentsquareの導入によって、課題に対してどのようにアプローチしましたか?
竪川氏:まずはブランドごとに同じ話をするために、追うべきKPIを絞り込みました。受注予算やCVRから目標セッション数を算出し、ページ公開後に良し悪しを明確に判断できる状態を作りました。
また、GA4のような数字だけの並列表示では数値の「揺らぎ」に気づきにくかったのですが、ContentsquareはダッシュボードのUIが非常に見やすく、データに苦手意識があるメンバーでも直感的に数字を把握できるようになりました。

関河氏:具体的な運用としては、まず「森を見る」ために2種類のダッシュボードを活用しています。1つは事業部全体の概況を把握しEC販路を管轄するセールスチームに展開する「事業部別ダッシュボード」、もう1つはブランドやPRチームと同じ目線で成果を把握する「ブランド別ダッシュボード」です。
週ごとの推移やKPIの揺らぎをひと目で発見できるため、部門間のコミュニケーションのハブとして機能しています。
さらに、「ページコンパレーター」機能を使い、公開した全コンテンツの成果を一覧で横並び比較しています。新着コンテンツの動向だけでなく、過去に作成したページが今も閲覧数やCVRに貢献していることが可視化されるため、制作・PRチームのモチベーション向上にも繋がっています。

「データを一目で見やすく可視化したことで、チームや部署を越えて同じ目線で会話ができる仕組みが整いました」(関河氏)
最下部バナーの改善で経由収益167%アップ。即日改修を可能にしたゾーニング分析
── 具体的な分析と改善の事例について教えてください。
関河氏:「mix.tokyo」に出店しているレディースブランドにおいて、デニムにフォーカスした特集ページの改善を実施しました。 このページは「遷移率」を目的に作成していましたが、ページコンパレーターで確認したところ、同カテゴリーの平均値(90%以上)を下回る状態でした。そこで「ゾーニング分析」を用いてページ内の要素別数値を詳細に確認しました。 分析の結果、ページを見た人のうち何%がクリックしたかを示す「魅力度」において、ページ最下部に設置していた「デニム一覧ページへの遷移ボタン」の魅力度が8.7%と高いことが判明しました。

掲載品番数は少なかったものの、「お客様はもっと他のデニムアイテムも回遊して見たいのではないか」という仮説が立ちました。
そこで、約1ヶ月前にリリースしていた「デニムのルックブック特集」へ遷移するバナーを最下部に新たに追加する提案を行いました。
即日改修とスピード感のあるPDCAサイクル
関河氏:ブランド側の合意を得た後、課内のエンジニアに即座に修正を依頼し、その日のうちにページの改修を実装・公開しました。
翌週の定例ミーティングで結果を振り返ったところ、新設したバナーの魅力度は8.7%から18.3%へと約2.25倍に向上。過去ページへの回遊を生み出すとともに、このデニム特集ページを経由した収益は改修後で約167%向上するという大きな成果を達成しました。

コンテンツは「生もの」であり、アパレルにおいては季節性が極めて重要です。気づきから実行までのスピード感を持ち、小さな改善を重ねることが全体の成果最大化に繋がると実感しています。

「仮説に基づき即日改修を行った結果、バナー魅力度は約2.25倍、経由収益は167%アップを達成しました」(関河氏)
属人化していた「センス」の民主化。他部門を巻き込むデータ駆動への挑戦
── Contentsquareの導入は、組織やメンバーのマインドにどのような変化をもたらしましたか?
竪川氏:ランディングページ制作において、従来はムードや世界観といった定性的な「センス」に頼る部分が大きく、属人化しやすい傾向がありました。 しかし、Contentsquareによって数字やゾーニングデータが直感的に見えるようになったことで、定性的なクリエイティブの成果が可視化され、組織としての「共通言語」になりました。 これにより過去の数値をナレッジとして蓄積できるようになり、誰でも再現性を持ってクリエイティブ制作やディレクションを行える環境が整いつつあります。
“今までコンテンツの良し悪しを掲載商品の受注数やセッションでしか計測できなかったところ、Contentsquareを導入したことでクリック率・CVR率など様々な指標で確認できるようになり、とても役に立っています。
特にゾーニング分析をよく使っており、サイト改修のための分析だけでなく、日々のサイトコンディションのチェックにも使えるので、それをもとにコレクションの掲載位置変更や掲載商品の選定を行っております。 ” 株式会社TSI 営業部 前田様からのコメント
また、ContentsquareのAI機能である「Sense」を活用することで、専門的な指標の意味をその場でAIに質問して確認できるため、認
識合わせのコミュニケーションコストも削減されています。
関河氏:変化は私たちの課内だけに留まりません。セールスチームの担当者も自らゾーニングやコンパレーターで指標を確認するようになり、「トップページの配置を変更したことで売上に貢献できた」といった報告が届くなど、データに基づいたアクションが他部門へも広がっています。
── 導入にあたって苦労した点や、現在も向き合っている課題はありますか?
竪川氏:ブランドごとに顧客層や価格帯、文化が異なるため、どのような頻度や指標で見ていくべきかというノウハウや業務フローを型化し、組織全体に共有・定着させる点には現在も試行錯誤を重ねています。今後はこの教育や共有の機会をさらに拡大していきたいと考えています。

ツールの民主化を進め、さらなる体験設計のパートナーへ
── 今後の展望についてお聞かせください。
竪川氏:定性的な感覚やクリエイティブのセンスと、購買体験という定量的な実績を融合させ、お客様に「良い買い物ができた」と感じていただける成功体験を提供し続けていきたいです。 そのための判断材料としてデータを明確に活用していきます。クリエイティブのアイデアは人の数だけあって良いと考えています。

だからこそ、Contentsquareの活用をセールスチーム、PR、ブランドの販促担当者へとさらに広げ、組織全体でツールの民主化を推進します。全員が同じ数字を見て議論し、顧客体験を追求できる体制を強固にしていきます。
取材日:2026年7月7日

