株式会社ベルーナは、アパレル・雑貨、グルメ・ワイン、化粧品・健康食品、看護師向け商品等、多角的に通販事業を展開する企業です。アパレル・雑貨事業では長年、紙媒体を主軸として成長を遂げてきましたが、近年は「成長エンジン」として自社ECサイトであるベルーナオンラインストアの強化を最優先課題に掲げています。
同社では、コロナ禍の巣ごもり需要による追い風が止んだ後の流通額の推移に危機感を持ち、2024年よりContentsquare(コンテンツスクエア)を導入。売上の背景にある「お客様の満足度」を可視化することで、感覚に頼らない組織的なUX改善を推進しています。
単なるツール導入で終わらせず、いかにお客様の「事実」を組織の共通言語とし、オンラインストアの具体的な改善へと繋げていったのか。経営層と現場、それぞれの視点からその軌跡を詳しくお聞きしました。
会社概要
ベルーナグループは、「お客様の衣食住遊を豊かにする」という経営理念の下、1968年の創業以来、「顧客志向・顧客密着」を合言葉に、通信販売を中心として、ソリューション事業やファイナンス事業等多様なサービスを展開しています。近年ではホテル事業等のプロパティ事業も拡大を続けています。
【お話をうかがった方】
株式会社ベルーナ 取締役 執行役員 EC事業本部長 宮下 正義氏
EC事業本部 Eマーケティング部 UXデザイン室 係長 清水 庸平氏
EC事業本部 第1EC事業部 係長 細沼 莉江氏
※所属・役職は取材時(2026年3月5日時点)のものです。
── サイトは貴社の中でどのような位置付けでしょうか?
宮下氏:ベルーナオンラインストアでは40代~60代女性・50代~70代男性を中心にアパレル・雑貨商品を販売しています。アパレル・雑貨事業では、EC媒体以外にもチラシ・カタログ等の紙媒体や実店舗展開を行っています。
現在の外部モール展開を含めたEC媒体が占める売上構成比は3割程度ですが、ECチャネルの市場拡大が継続していることを踏まえ、成長エンジンとして事業全体に貢献することがミッションとなります。
売上の急落が突きつけた、購入体験への問い
── まず、Contentsquare導入に至った背景を教えてください。
宮下氏:きっかけは、私がEC本部長に着任した際に感じた「違和感」でした。コロナ禍の巣ごもり需要で一時的にEC売上は急増しましたが、その後、他社が成長を維持する一方で、当社の特定の事業は大きく数字を落としていました。 「なぜ、一度買ってくださったお客様が戻ってこないのか?」
各種のデータや顧客情報を確認した上でその原因を突き詰めると、「新規顧客・ライトユーザーの購入体験・商品到着後の顧客満足度がそもそも低いのではないか? 我々は顧客目線で評価・判断・意思決定ができていないのではないか?」という仮説に行き着きました。
通販において、継続的な成長には顧客満足度が不可欠ですが、それは目に見えません。この目に見えないものをいかに客観的な指標に落とし込み、改善していくか。そのために、お客様のECサイト内での動きを可視化できるContentsquareの導入を決めました。

組織全体で「これまでの経験」というバイアスを排し、共通言語を「事実」に変える
── 組織全体で「目に見えない顧客満足度の改善」に取り組む意義について
宮下氏:『顧客満足を上げる』という目的はツールを導入するだけでは達成できないと考えています。また、一部の領域だけの改善では顧客からの評価に与える影響は軽微です。
お客様から見れば部門・チームの役割分担は全く関係ないことであり、自身が見たページ全てに対して信用できるのかできないのか、分かりやすいのか分からないのか、不安や不満を感じるのか感じないのかに尽きると思います。そのため、組織横断にて全方位で対応することが肝要です。
── Contentsquare導入によって、組織の意思決定や体制はどのように変わりましたか?
清水氏:導入前は、サイト改善の議論がどうしても「推測ベース」になりがちでした。「これまでの経験からして、こうだろう」という属人的な判断やバイアスが入り込み、議論が平行線を辿ることも少なくありませんでした。
しかし、Contentsquareで実際のお客様の動き(ジャーニー分析やセッションリプレイ)を可視化できるようになってからは、会話の軸が肌感覚や推測から「サイト内の実際のお客様の行動」という事実に基づいた意思決定へと劇的に変化しました。
細沼氏:現在では、デザイナーも主体的に数値を見に行くようになり、お客様がどこで迷っているのかを自ら発見して改善案を立案しています。社内の共通言語が「データ」になったことで、全員が納得感を持ってスピーディーに施策を実行できる体制が整いました。

ログイン完了率が1.4倍へ向上。セッションリプレイから発見したログイン画面の「盲点」
── 具体的なUX改善の事例を教えてください。
清水氏:Contentsquareのセッションリプレイを活用して、ログイン画面における重要なインサイトを得ることができました。 当社サイトでは、外部サービス(Yahoo! JAPAN IDなど)を利用したログイン機能を提供していますが、前回その機能を使ってログインしたお客様に対して「前回は○○でログインしました」という吹き出しを表示していました。
しかし、実際の行動を観察すると、多くのお客様がその案内に気づかず、×ボタンでわざわざ案内を消してから、当社IDでのログインを試みて失敗し続けていることが判明したのです。
そこで、「案内を目立たせる」ために2つの改修案をテストしました。
改修案①:案内の背景色をピンクに変更し、視認性を高める。
改修案②:吹き出しを削除し、案内文と該当のログインボタンを赤枠で囲って表示する。

結果、両案ともログイン完了率が増加しましたが、特に案②の改善率が顕著に高く、注文完了までのCVR(コンバージョン率)も向上しました。数値だけでなく、お客様の「迷い」を直接観察したからこそ、本質的な改善に繋げられた事例です。
PV数+22.7%、経由売上+7.6%を達成。要素単位の分析がもたらした「バナー更新」の劇的成果
── クリエイティブの改善でも成果が出ているそうですね。
細沼氏:はい。特集ページのバナー更新においても、Contentsquareの「ゾーニング分析」を活用しました。 以前はPV(ページビュー)や売上の総数だけで判断していましたが、ゾーニングを使うことで、バナー内のどの要素(商品画像、商品説明、モデルなど)がクリックされているかという「魅力度」を詳細に把握できます。

今回、特定のパーカーが在庫切れになったタイミングでバナーを更新しましたが、その際、Contentsquareのデータから「圧倒的にクリックされているブラウス」は据え置きつつ、もう一方の商品を「気温低下に合わせた裏起毛素材」かつ「LP内で魅力度が高かった暖色系の画像」へと差し替えました。

さらに、LP内のクリックデータで好反応だった新規投入したモデルさんをテスト起用した結果、カルーセルの枠効率が大幅に向上し、PV数は+22.7%、経由売上は+7.6%という高い改善効果を得ることができました。


「売り手目線」からの脱却。Contentsquareがもたらした事業判断の変化
── Contentsquareをどう評価していますか?また、組織の行動はどう変わりましたか?
宮下氏:Contentsquareは、顧客のフラストレーション箇所の特定から改善後の予測効果の算出までを可能にします。導入を通じて痛感したのは、『顧客志向・顧客密着』はベルーナグループの大切にしている考え方ですが、我々が「やっているつもりで顧客志向になれていなかった」という事実です。
KPIデータだけで顧客行動や評価を決めつける、売り手目線の強さが浮き彫りになりました。
この結果を受け、現在は各チームが商品レビューや顧客問い合わせ、そしてContentsquareでの顧客の動きといった「直接情報」を最優先に評価軸へ組み込んでいます。大きな変化として、質の低い広告費用を削減し、顧客体験(CX)を向上させるツール導入や施策へと費用のアロケーション(再配分)を行うようになりました。
意思決定の前に、自発的に顧客ヒアリングを行う文化も定着し始めています。
清水氏:実装面でも、サイト内容のイベントデータ取得など都度タグ埋め込みなしで全データを集計できるため、施策のスピード感を落とさずに進められる点は非常に助かっています。
データドリブンな文化と、事業成果への繋げ方
── データに基づいて議論・意思決定する文化を浸透させるために工夫したことはありますか?また、実際にコミュニケーションの変化はありましたか?
宮下氏:単に「データに基づこう」と呼びかけるのではなく、「顧客の生の声・行動を直視する」という考え方を浸透させてきました。
現在はContentsquareの業務フローへの組み込みが進んでいますが、それ以外にも優良顧客との対面インタビューを定期的に行い、我々の認識とのギャップ解消に努めています。また、顧客問い合わせ内容や商品レビューの分析から改善へ繋げる仕組みも構築し、問い合わせ率を継続的に削減できるよう、本当に満足度が高い商品の販売優先度を上げるよう、より「川上」での改善を推進しています。
以前よりもお客様を身近に感じるメンバーが増えたと実感しています。各種ミーティングにおいても、単に「売上が~」と話すだけでなく、「お客様が~」「顧客満足度が~」といった発言頻度が確実に増えています。
細沼氏:CSLiveが使いやすいため、特にハードルを感じることなく、自然と日々のPDCAサイクルに組込みができました。
清水氏:これまではGoogleアナリティクスの数値とお客様の声をベースに該当ページを見て、原因箇所や仮説を「想像」するしかありませんでした。
現在は継続的な声の収集に加え、実際のサイト内行動の把握にContentsquareを活用することで、確信を持って施策を打てるようになっています。
── 最終的な「事業成果(売上・利益)」に繋げるために、どのようなKPIを設定していますか?
宮下氏:顧客問い合わせ率の削減、レビュー点数の向上、返品率の改善等です。Contentsquareの活用においては「インサイト(仮説)数・実行数・想定経済効果・ABテスト本数と勝率」を重視しています。
その上で、会員登録完了率や決済完了率、カートイン率などをサブ指標として追い、中長期的にはシーズン・年間での顧客リピート率や満足度調査で推移を確認しています。
また、KPI設定以外で重要なのが「活用の仕組み」です。毎月のContentsquare社との定例会には、UXチームだけでなく各チームから参加してもらい、活用内容や学びを報告し合う場を作りました。成功事例だけでなく失敗事例も交換することで、組織全体でより有効な活用の仕方を目指しています。
パーソナライズの加速と、さらなる顧客志向の未来へ
── 今後の展望についてお聞かせください。
宮下氏:今後は、一人ひとりのお客様に合わせた「パーソナライズ」をさらに推進していきたいと考えています。Contentsquareによってサイトの基礎体力は上がってきましたが、次は「誰が、何を求めて来訪しているか」をより深く理解し、接客の精度を高めるフェーズです。
清水氏:現在、新規のお客様に特化した分析もスタートしています。お客様がどこで困っているかを潰すだけでなく、新規のお客様が「また来たい」と思えるような、期待を超える体験をデータから導き出していきたいです。
細沼氏:お客様の見たいもの、探しているものをより親切に、タイムリーに提示できるようなサイト作りを目指します。ContentsquareのAI活用なども含め、分析の自動化・高速化を図り、常にお客様に寄り添った運用を続けていきたいと考えています。
最終的な目標は、お客様がサイト内で何を、どのような切り口で探しているのかを深く理解し、デジタルを通じてもっと「親切に接客できるサイト」を実現することです。売上という結果の数値だけを追うのではなく、お客様が本当に満足し、ハッピーな状態で商品を使用して頂いているかという「事実」に誠実に向き合い続けること。
一人ひとりの趣向や利用価値に寄り添った最適な提案を通じて、お客様に心から「ベルーナでの買い物が楽しい」と感じていただける環境を、組織一丸となって作り上げていきます。
【関連リンク】
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