2023年1月26日(木)、Contentsquareは「Contentsquare ROI オンデマンドウェビナー」を開催いたしました。株価低迷・不況の予測で多くの企業で予算削減傾向にあるなか、お金のかかる「新規顧客獲得」が困難になってきています。
今回のウェビナーでは、ウェブサイトやアプリにおいて、新規獲得に頼らない最小限の投資で成果を最大化する方法をContentsquare Japanのアカウントエグゼクティブ岡山奈央が解説いたします。
「すばらしいデジタル体験」とは
今回のセミナーは、岡山の消費者としての個人的なデジタル体験の紹介からはじまりました。デジタルチャネルのUX改修を考えていくうえで、ユーザーにとって「すばらしいデジタル体験」とはどういった体験なのか考えます。
私は、服や靴、バッグが大好きなので、さまざまなECサイトを利用します。特に「ZOZOTOWN」が好きで、非常に良いデジタル体験が提供されています。
比較的リーズナブルな価格帯の商品がそろっているのはもちろん、頻繁にキャンペーンのクーポンが発行されます。自分が知らなかったブランドのクーポンをもらえることも少なくなく、新しいブランドとの出会いがあります。
お得に買えているというポジティブな感覚を抱きながら、支払いも簡単に終わります。色とサイズの在庫もすぐに確認できるのも「ZOZOTOWN」の良いところです。
すばらしいデジタル体験には、これらの5つがそろっている必要があると考えています。
1つ目はエラーがないこと。
2つ目はさくさくとスピーディーに動くこと。
3つ目は求めている情報や欲しい商品がすぐに見つかること。
4つ目は自分の興味があるパーソナライズされたコンテンツが出てくること。
最後に、直感的で分かりやすいUI/UX。
多くのユーザーが抱える不満を把握できない企業
一方、当社独自の調査結果では、オンラインショッピングにおいて、85%ものユーザーがその経験に不満を感じているというデータがあります。
そして、84%もの企業が、ユーザーが不満を感じている理由が理解できていません。
Boston Consulting Groupの広告資料では、企業がデジタルトランスフォーメーションに多くを投資していますが、そのうち70%が失敗に終わっているという調査結果が示されています。
子どもたちが遊んでいる絵があります。公園には立派な滑り台がありますが、子どもたちは滑り台を使わずに、丘を滑って遊んでいます。これと同じことが、ウェブサイトやアプリにも言えます。
T-MobileのGiles Richardson氏が次のように述べています。
「オンライン上に設置したもの(ページやボタン)のうち、80%は意図したとおりに機能しません。常に自分たちの推測は間違っている、ということを分かっておく必要があります。」
つまり、企業が優れた導線だと想定してページやボタンを用意したとしても、ユーザーは意図されたようには使わないというわけです。
従来のウェブ解析ツールでは分からないユーザー行動のワケ
どうして大多数のユーザーが不満を抱えているにもかかわらず、企業側は改善できないのでしょうか。課題を解決するために、従来のツールでは限界があるのかもしれません。
果たして、これまでと同じツールで、ユーザー行動を適切に、詳細に理解することはできるのでしょうか。
20年以上にわたって、企業はGoogle AnalyticsやAdobe Analyticsに代表されるウェブ解析ツールを使用してユーザー行動を分析してきたはずです。
しかし、これらのツールを使って、例えば次のような質問に回答を得られるでしょうか。
「多くの顧客がオーダーレビューのページで離脱しているのはなぜ?」
「特定のプロダクトの購買ジャーニーを改善する際のROIはどれくらい?」
「『検索結果が見つかりませんでした』がコンバージョンに与える影響とは?」
従来のウェブ解析ツールは、「何が起こったのか」という事実を数字で示すためのツールでした。
どこで顧客が離脱したのかという数値は取得できますが、ユーザーがウェブサイトやアプリを離脱した理由、ウェブサイトにおける阻害要因や改善点の提案といった解を示してくれるものではありません。
これがユーザー行動を理解できない背景にある課題です。
多くの企業では、「なにが起こったのか」という数値を取得しています。なかには、AB TastyやOptimizelyといったABテストツールを導入しているケースも少なくありません。
Contentsquareのサービスは、ウェブ解析ツールやABテストツールに取って代わるものではなく、これらのツールだと知りえなかったウェブサイトやアプリに訪れてからの顧客の行動を可視化するためのツールです。
「デジタル体験分析」というカテゴリーに位置づけられ、他のツールとの併用が可能です。
Contentsquareは創業して約10年になります。
世界中で1000社以上のお客様にお使いいただいています。
日本では、楽天グループ様、JCB様、三菱地所様、リクルート様など、日本を代表とする多くの企業様がご利用されています。
顧客体験を可視化する
顧客の行動を可視化し、ひも解くことができるContentsquareが提供しているツールのいくつかを紹介します。
Contentsquareがどのように機能するか見てみたい方は、6分のプロダクトデモをこちらからご覧ください。
Contentsquareが可能にする、顧客の行動を可視化しひも解く機能について、4点だけお話しいたします。1つは「ジャーニー分析」です。
これはウェブサイトに訪れてからの顧客の行動を示しています。図の内から外に、顧客の行動が推移していることを表しており、ウェブサイトやアプリに訪れてからの顧客の行動の全体像を把握できます。
そのうえで、「ゾーニング分析」では、各ページでユーザーがどのような行動をしているのかさまざまな指標で見ることができます。
他のツールにもあるようなクリック率やスクロール率のほか、当社独自の指標が19個あります。
**さらに深くひも解いていくときには、「セッションリプレイ」が有効です。**顧客情報を一切取らずに、プライバシーをきちんと守りながら、ユーザーが実際にどのような行動をしているのかを動画として再生することができます。
リプレイ動画を通して、なにが起こったのか、仮説を検証することができる機能です。
また、「インサイト」では、仮にエラーメッセージが出ているということが判明したとすると、そのエラーメッセージがどの程度のユーザーに起きているのか、その事象に対する定量的分析をできます。
このような機能群により、ウェブサイトやアプリに訪れてからのユーザーの行動を可視化、分析できるのがContentsquareです。
デジタルチャネルのROIを最大化する
当社のツールを活用してウェブサイトをはじめとしたデジタルチャネルROIを上げることに成功した企業様の事例を、Contentsquareの機能とともにご紹介いたします。
デジタルチャンネルでROIを特に最大化するためにできるエリアを3つ紹介します。1つ目はトップページです。効果的に設計されているトップページを2件ご紹介いたします。
トップページ:うまく設計されている事例
まずは、「Tesla」のウェブサイトです。モバイルサイトの画面下部に下向きの矢印が表示されています。
表示エリアが少ないモバイルサイトにおいて、多くのコンテンツを見てもらうために、矢印のグラフィックによってユーザーにスクロールを促しています。
もう1つは、アパレルECサイトの「Net-a-porter」です。トップ画面のファーストビューにおいて、ヒーローバナーのサイズがあえて小さく配置されています。次のコンテンツを少し見せることにより、より下にもさまざまなコンテンツがあることを示しています。
これらのサイトでは、トップページでユーザーのスクロールを促すように非常に効果的に設計されています。
トップページ:Contentsquareを活用したUXの改善
インドで非常に有名な企業である「ITC」様の事例です。1910年創業の食料品製造販売会社です。
当時、ウェブサイトの刷新するプロジェクトに取り組まれていました。どこをどのように変えたらよいのか、課題点を抽出するためにContentsquareをご活用いただきました。
トップページにはプロモーションの欄がいくつかあります。まず、ここが平均8回クリックされているという事実が分かりました。
実は、クリックしても何らかのコンテンツに飛ぶわけではないのですが、プロモーションとしてユーザーの興味をひいており、平均8回クリックされていました。
次に、トップページのファーストビューすぐ下にあるコンテンツがまったく見られていないことが分かりました。
ここでは当社独自の「魅力度」という指標を使いました。
魅力度は、これらのコンテンツを見た人たちを母数として、どれくらいの人たちがそれらをクリックしたのかを計測し、コンテンツ自体の魅力度を示す指標です。
上図の左が改修前、右が改修後です。クリックできない要素を削除し、クイックサーチのボタンを追加しました。
魅力度が低くクリックされていないコンテンツのエリアは、お得な情報の提供としてベストオファーの新セクションにしました。
このサイトに訪れるユーザーがプロモーション情報を平均8回クリックしてしまうほどにお得な情報に敏感であることを考慮した施策です。
当社のジャーニー分析で、改修前後のユーザー行動を示した上図をご覧ください。
左が改修前、右が改修後です。
ピンク色のトップページから行動がはじまり、黒色は離脱を示しています。以前は61%が直帰していましたが、改修後は直帰率が44%まで下がり、39%減少しました。
このグラフは、別の興味深い現象も示唆しています。改修前に比べて、改修後のほうが、ユーザー行動の4ステップ目の色数が増えています。
すなわち、改修後のほうが、より多くのコンテンツが見られているということです。
商品ページへの到達率に注目すると、改修前の7%から、改修後は13%に増加しており、商品ページにたどりつくユーザーが86%増加したことになります。
一方、魅力度の指標からもコンテンツを改善しました。
他のコンテンツに比べて魅力度が高いにもかかわらず、下部に配置してしまっているコンテンツがありました。そのコンテンツを上部に移動させると、魅力度、すなわちクリック率が29%上昇しました。
同様に、魅力度が高かった「最も売れたおすすめ商品」というコンテンツも上に移動させた結果、魅力度が111%向上しました。他にも、12.5%と比較的高い魅力度にもかかわらず下にあったコンテンツを移動させ、86%の向上が見られました。
また、同じ魅力度の指標を使いつつも、コンテンツの配置替えではなくて、コンテンツのビジュアル自体を変更した事例もあります。
商品のカテゴリーごとに写真が添えられていますが、まったくクリックされていませんでした。
ユーザーに魅力的にうつらなかったビジュアルを削除し、テキストボタンに変更すると、魅力度が35%上がりました。
結果として、このITC様は収益が35%上がり、年間収益は33万1,000ドル(USD)を見込みました。日本円にすると、約4,300万円収益が向上し、コンバージョンレートは7%上がったことになります。
次に、ROIを最大化するための重要なページとして、製品詳細ページについてお話しいたします。
製品詳細ページ:うまく設計されている事例
「Revolve」では、モバイルサイト上でテキストを極力少なくして、主にビジュアルでナビゲーションやフィルターを提供する取り組みをしています。
服の形状やスカートの丈、色合いなどをアイコンで選択できるようになっています。
一般的には、テキストのタブで選択させるケースが多いですが、ビジュアルを活用している事例です。
同じくアパレルECサイトの「Reiss」では、ユーザーがスワイプまたはスクロールすることで、製品詳細ページを次々と見ることができます。
よくあるウェブサイトでは、製品詳細ページを開き、興味がなかったときには、一度「戻る」こと必要になりますが、サイト内のユーザー行動に柔軟性をもたせている良い事例です。
製品詳細ページ:Contentsquareを活用したUXの改善
オランダに本社がある「BEERWULF」という2016年創業のビール販売会社様の事例をご紹介いたします。
まず、カスタマージャーニーと呼ばれる、サイトに訪れてからのユーザーの行動を分析しました。すると、「Amstel TORP」という主力製品を見たユーザーが何度も「カートに追加」ボタンのあたりにずっと滞在しつづけていることが分かりました。
しかし、クリック率を確認すると、「カートに追加」ボタンがクリックされているのは平均1.5回だと分かりました。
なぜこのようなことが起きているのでしょうか。
BEERWULFでは、8個まとめて注文すると、送料が無料になります。
その結果、多くのユーザーが何度もクリックして8個をカートに追加していました。そこで、8個を一度にカートに追加できるボタンを追加しました。
非常に単純な施策ですが、大きなリターンを得られました。
カートの投入率は5.88%増加、1訪問者あたりの収益は6.7%増加、平均注文品数は6.4%増加となり、年間換算での収益増は累計65万ドル(USD)、日本円でおよそ8,500万円の収益増が実現できました。
ROIを最大化するための重要な要素の最後は、オンラインフォームです。
ここまではECサイトの事例を中心に、「カートに追加する」「購入する」というコンバージョンについてご紹介してきました。
一方、BtoBのビジネスをされている企業では、お申し込みフォーム、お問い合わせフォーム、カタログ請求フォーム、予約フォームといったさまざまなオンラインフォームを活用されています。
オンラインフォーム:うまく設計されている事例
上図はある保険会社の事例です。
保険の申し込みというと、細かな注釈や小さな文字が多いイメージですが、直感的に回答しやすいものになっています。
このように、分かりやすい言葉で、ステップ・バイ・ステップで回答していくと申し込みが完了する、よくできたオンラインフォームです。
ニューヨーク発の眼鏡ブランド「Warby Parker」もすぐれたオンラインフォームを備えています。
テキストではなく、グラフィックに沿って、ステップ・バイ・ステップで、自分好みの眼鏡の種類や形を選んでオーダーすることができます。
オンラインフォーム:Contentsquareを活用したUXの改善
最後にご紹介するContentsquareを活用して改修したオンラインフォームの事例は、あるオーストラリアのエンターテインメント企業で、動画コンテンツを配信する事業に取り組んでいます。
このウェブサイトでは、お申し込みフォームまでは到達しているにもかかわらず、そこからの離脱率が非常に高いという課題がありました。
お申し込みフォームまで来たユーザーがどうして離脱するのか、その心理や行動の背景が把握できていませんでした。
ジャーニー分析でユーザー行動を見ても、黒色の部分が示すように、多くの人がお問い合わせフォームから離脱していることが分かりました。
ユーザー行動を詳しく見ていくと、オンラインフォームのなかで、何度もユーザーが再入力している部分が判明しました。Eメール、パスワード、電話番号、郵便番号、これら4つの項目が再入力されていました。
また、「サインアップ・アンド・コンティニュー」という、サインアップして次に進むためのボタンが1.42回クリックされていました。このボタンは本来1回のクリックで済むはずものです。
しかし、ユーザーの約40%がこのボタンを平均1回以上クリックしているので、確実に問題があることが分かりました。
つまり、Eメール、パスワード、電話番号、郵便番号の入力でユーザーは失敗し、その結果、何度もサインアップのボタンを押していたわけです。
そこで、サインアップページの前に、Eメール認証のステップを入れました。
すると、認証をしたユーザーと、認証していなかったユーザーを比べた結果、離脱率が半分以下になりました。
ABテストツールを使用し、このEメール認証の効果をテストした結果、認証があったほうがより良い得られることがわかりました。
この施策により、どの程度のビジネスインパクトがあるのか、Contentsquareで21日間計測すると、認証を行なったユーザーと認証を行なっていないユーザーとで比べたとき、コンバージョンレートで約24%の差がありました。
ビジネスインパクトとして、12万3,876豪ドル、日本円にして約1,100万円の改善が見込めることが自動的に計算され、実際にEメール認証を取り入れるプロジェクトが実施されました。
顧客体験の可視化への投資は大きな利益をもたらす
最後に、不安定な世界の状況のなかで、Contentsquareへの投資が高いROIを達成できるのか、第三者機関による評価から投資妥当性について解説いたします。
これらの事例によって、ユーザー行動の可視化の重要性や有益性をご理解いただけたと思います。ここからは、この領域に投資する妥当性についてお話しいたします。
世界的に不況のなか、投資の妥当性判断はどんどんシビアになっています。売上や収益だけでなく、人的工数に関しても厳しい目を持つ企業が増えています。
多くの企業において新規獲得の予算は多く確保されていますが、コンバージョンレートや効率性を高めることが求められていると考えています。
これまで紹介してきた事例では非常に多くのリターンが獲得されていましたが、Contentsquareの利用は、効率的なROIを実現するのでしょうか。
Forrester社が第三者機関として、当社のユーザーにヒアリングを行ない、発表している数字が上図です。
大規模な企業様が多いので大きな金額になっていますが、3年間の投資金額としておおよそ1.08ミリオンドル(USD)、得られた利益は7.55ミリオンドル(USD)、ROIは602%となり、非常に高いROIをもたらすことが報告されています。
従来のウェブ解析ツールでは、ユーザーの行動や心理は見えてきません。
これまでと変わらず経験と知恵と勘を活かしながら日々の業務改善、顧客体験向上にお取り組みいただくのか、あるいは、ユーザー行動データに基づいて取り組みを行なっていただくのか。
どちらに進むのが皆さまにとってふさわしい動きなのか、ぜひご検討ください。