「たとえるなら、レントゲンやCTスキャンのようなもの。外から眺めるだけの診察とは、まったく異なる」。ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)で執行役員 CMO/CIOを務める志賀 智之氏は、2023年12月6日に開催されたイベント「CXカントリークラブ」でContentsquareのデジタル顧客体験アナリティクス(DXA)をこう表現しました。
ウェブサイトやモバイルアプリのようなデジタル上の接点が、あらゆる業界・業態のブランドにとって重要度を増し続ける中、ブランド運営者はその改善に力を注いでいます。しかし、自社が提供しているデジタル接点の体験が「ユーザーにとって、良いのか・悪いのか」を正しく把握せずして、改善はできません。良かれと思って実施した変更が、ユーザーにとって改悪になってしまうこともあるからです。
ところが、「ユーザー体験(UX:User eXperience)の良し悪し」を正しく把握することは、従来それほど簡単ではありませんでした。そこでGDOが注目したのが、Contentsquareです。旧来のアナリティクスとは別次元の可視性が得られるContentsquareを活用することで、同社は“ユーザーテストそのものをデジタルトランスフォーメーションする”取り組みをしています。
本稿では、そのプロジェクトを主導する志賀氏が登壇したイベントの様子をレポートします。
デジタルCXの学び合いの場「DX Club」
このイベントは、デジタル体験(Digital eXperience)の改善を推進するリーダーの皆さま同士のつながりを支援し、あるべき像や課題に対する取り組みについて共有・ディスカッションするクローズドな場として立ち上げた「DX Club」の特別版です。
今回は、GDO本社内にある「クラブハウス」と呼ぶスペースをお借りし、コンテンツスクエアと、そのソリューション・パートナーであるギャプライズが共同で開催しました。
GDOは、ゴルフ用品のオンラインショップやゴルフ場の予約など、ゴルフに関連するインターネットサービスの提供をメイン事業とし、その他にも、メディア運営、レッスン、テクノロジーを導入した練習場、スコア管理アプリといった事業やポータルサイトも手掛けています(参考リンク:GDOグループの事業紹介)。
今回のイベントでは、ゴルフ場の予約サイトとゴルフのスコアアプリを対象に実践した「ユーザー行動観察調査をデジタルトランスフォーメーションするプロジェクト」の裏側を、実際の分析画面のライブ披露も交えながら参加者に共有しました。
ゴルフダイジェスト・オンライン本社オフィスの「クラブハウス」。「パッティング・グリーン」「ドライビング・レンジ」も隣接する。
GDO志賀氏と、運用支援を担うギャプライズ CXO事業部 カスタマーサクセスチーム マネージャーの鎌田 洋介氏が登壇し、コンテンツスクエアのカントリーマネージャー 伊奈 憲一郎がモデレータを務めました。
イベントのオープニングでは、コンテンツスクエアのカントリーマネージャー 伊奈 憲一郎が「DX Club」を立ち上げた意図を語りました。
———-
_DX Clubをコンテンツスクエアが立ち上げた意図について詳しくは、こちらの記事をご参照ください。_デジタル顧客体験のリーダーのコミュニティ型イベントを開催 ~モビリティの革新者WILLER が戦略と施策を共有~
https://contentsquare.com/jp-jp/blog/dxclub-autumn-tokyo-2023/
———-
ウェブサイトとモバイルアプリのユーザーテストをDXA上で
前述の通り、「ユーザー体験(UX)の良し悪し」を正しく把握することは、従来それほど簡単ではありませんでした。志賀氏は、その背景に次のような課題があると述べました。
調査や分析には時間と人的リソースが必要で、やみくもに実施できない。
担当者のスキルがそのまま、調査・分析の精度に影響する。
ユーザーテストの被験者を確保することが難しい。
それに加えて、サービスやプロダクトの特性によって生じる固有の課題もあります。たとえばGDOの場合、スコアアプリではゴルフ場でホールを回りながら使用されるため、その利用実態をユーザーについて回って観察することも現実的ではなく、そうかといって利用ログだけでは見えてこないバグや問題がありました。
一般的なユーザー行動観察調査(出典:ゴルフダイジェスト・オンライン)
そこで志賀氏は、次のような効果を狙い、一般的な手法をContentsquareのデジタル体験アナリティクスで代替することで課題の解決に取り組みました。
ユーザーが実際に利用する動作テストができ、リアルな調査が手軽にかつスピーディに実施可能
UTの被験者の調達コストの削減
ログからは見えないバグや問題の見える化
アジャイル開発での活用
ユーザー行動観察調査DXプロジェクトの全体像(出典:ゴルフダイジェスト・オンライン)
対象にしたのは(1)ゴルフ場の予約サイトと(2)ゴルフのスコアアプリで、(1)ではゴルフ場予約のメイン導線から完了までのコンバージョン率(CVR)改善、(2)ではスコア登録のユーザーインタフェース改善を達成できることを検証しました。
GDOスコアアプリ(出典:ゴルフダイジェスト・オンライン)
このプロジェクトについては2023年6月28日にコンテンツスクエアが開催した「CX Circle Tokyo 2023」でも志賀氏が講演しており、詳しくは次の記事をご覧ください。Contentsquareのセッションリプレイ機能を用いたユーザー行動観察によって、スコアアプリのユーザーが自分のスコアをすべて入力し、「あとは保存するだけ」というところでなぜか保存せずに離脱する原因を突き止めた事例が共有されています(セッションリプレイで捕捉した問題箇所の動画あり)。
ゴルフダイジェスト・オンラインと再評価する顧客体験改善の価値
https://contentsquare.com/jp-jp/blog/cx-circle-tokyo-2023-gdo-dx/
今回のDX Clubではさらに、クローズドの場であるため、参加者の前でContentsquareの分析プラットフォームにアクセスし、実際の分析画面を開いてライブでデータを披露しました。
こんな変化が起きた!
このDXユーザーテストによって起きた変化として志賀氏は以下のような点を挙げました。
エラー時にユーザーに表示している文言にも問題があったことに、気づくことができた
エラー時に「戻るボタンを押しても戻れない」という別のエラーも複合していることに気づけた
エラーの再現方法が全て録画されているので、スピーディーに現象の再現ができた
「これがもし旧来方式のユーザーテストだったら、そもそもサンプル数が少なくて見つかっていなかったでしょう。また、テスターがエラーを報告せず埋もれてしまったり、もし見つけられたとしても、ただの在庫エラーだったということで処理されてしまう可能性がありました」(志賀氏)。
さらに、この新たなアプローチは、現場に次のような変化をもたらしたと志賀氏は言います。
「エラーやバグの再現速度が高まり、対応スピードが向上しました。具体的には、テストからレポートまで2日間、クリティカルなエラーはユーザーテストをしながらリアルタイムで報告するといったスピード感です。さらに、マーケターと開発者の健全な意見交換ができるようになりました。これは、セッションリプレイによってお互いの目線がユーザーに揃うからです」。
さらに、今回のプロジェクトで対象にした予約サイトでは、改善施策を施してリリースした結果、申込みフォームのCVRが0.64ポイント向上する成果も得られました。
運用体制は?費用対効果は?参加者から突っ込んだ質問が続々
講演に続くのは、参加者の皆さまから受け付けた質問にGDO志賀氏とギャプライズ鎌田氏が答えるインタラクティブ・ディスカッションのパートです。ただ、このパートで共有された情報は「クローズドな場」であるDX Clubに実際に参加された皆さまだけにお持ち帰りいただくものであり、本稿ではレポートいたしません。ここでは、当日どのような質問が挙げられたか、その一部だけをお伝えいたします。
UX改善の運用はどのような体制で実施していますか?
社内でのツールの定着・利用を推進する工夫はどのようにしていますか?
Contentsquareは決して安価なツールではないと思うのですが、費用対効果はどのように捉えていますか?
志賀氏がこうした質疑応答の中で発したメッセージの一つが、記事の冒頭にある「Contentsquareは、たとえるなら、レントゲンやCTスキャンのようなもの。外から眺めるだけの診察とは、まったく異なる」です。その高い可視性によって、ユーザー体験を阻害する要素が「どこで」発生しているかだけではなく「なぜ」「どれくらいの規模で」発生しているかまでもが明らかになり、意図せぬ改悪を避けて、ユーザーにとって改善となる施策を打てるようになる。その効果は、ツールの費用を大きく上回る。志賀氏はそのように強いメッセージでディスカッションを締めくくりました。
「生々しい事例から、実践的な知見が得られる」
ディスカッションの後は、登壇者と参加者、そしてコンテンツスクエアとギャプライズのメンバーがオープンに交流し、情報や意見を交わすネットワーキングの時間です。
今回のイベントに集った参加者の業界は、EC、リテール、ファッション&アパレル、フード&ドリンク、住宅メーカー、メディア、保険・金融サービス、ハイテクまで幅広く、「デジタル顧客体験の改善」を共通言語とした会話があちこちで盛り上がりました。
事後のアンケートでは、参加者の皆さまから「サイト改善を素早く実行していく上で大変実践的だった」「分析ツールの活用や費用対効果など、導入に向けて参考になった」「時間が足りないと思ったくらい」「さまざまな会社の方と交流でき、とても勉強になった」といった声が寄せられました。
コンテンツスクエアでは、このDX Clubを継続的に開催していきます。ご興味がある方は marketing-japan@contentsquare.com までどうぞお気軽にご連絡ください。
※DX Clubのイベントは、ブランド運営企業を対象とした、招待制で開催するクローズドなイベントです。ブランド運営者を支援する立場の事業者さま(ツールベンダー、マーケティングエージェンシー、コンサルティング企業など)については、協賛や共催などの形での参画を提案させていただきますので、marketing-japan@contentsquare.comまでお問い合わせください。