経営幹部から下される目標。ユーザーが提供するインサイト。エンジニアチームから突き付けられる制約。プロダクトマネージャーの役割は、寄せられるすべての意見やデータポイント、アイデアを理解することです。そして、結果は交響曲にも不協和音にもなり得ます。すべては、個々の要素をプロダクト戦略フレームワークを用いてどのように整理するかにかかっています。
このガイドでは、大局的な製品ビジョンと製品ロードマップの具体的な詳細との間のギャップを埋める、製品戦略フレームワークの作成方法を解説します。このガイドを通じて、製品管理の取り組みを体系化する一連のステップを明確に理解することで、顧客満足度を高め、ビジネス目標を達成することが可能になります。
強力な製品戦略の策定に役立つ5つの問いから成るフレームワーク
製品戦略は、新製品の独自の価値提案、ターゲットオーディエンス、さらに、製品ライフサイクル全体を通して主要な目標をどのように達成するかを定義します。例えば、インクルーシブなランチボックスを提供する企業の製品戦略として、手の器用さに問題のあるユーザーでも使いやすいアダプティブデザインを作成することが挙げられます。
大局的に見ると、製品戦略は、概念的な製品ビジョンのステートメントと、短期的で実行可能な製品ロードマップの中間に位置します。
分かりやすいようにレストランを例に、製品ビジョン、戦略、ロードマップの関係を見てみましょう。
製品ビジョン:ビジョンは、製品がユーザーに提供する体験とメリットを意味します。例えば製品がレストランの場合、「最高級の食材を使った美味しい食事をお客さまに提供する」というようなビジョンが考えられます。
製品戦略:戦略では、製品の対象者と、彼らが製品に関心を持つべき理由を具体的に検討します。架空のレストランの例では、「ターゲットとする顧客」「提供する料理の種類」「具体的な料理の品」などが製品戦略に含まれます。
製品ロードマップ:ロードマップは、製品の今後のアップデートに関する計画を示します。レストランの例では、「使用するレシピと食材のリスト」「提供する料理の種類とタイミングのスケジュール」「メニューの更新内容」などが製品ロードマップに含まれます。
製品管理とレストランには、もう 1 つの共通点があります。それは、顧客に関する情報です。製品のビジョン、戦略、ロードマップには、意思決定を導くためのユーザーデータが必要です。
レストランを経営する場合は、お客さまの食事の好みやアレルギー、過去の経験などを考慮する必要があります。それと同様に、ユーザーを理解しないまま製品戦略を立てることはあり得ません。このガイドで紹介する製品戦略フレームワークでは、全ステップを通して、「ユーザー中心」のテーマに重点が置かれています。
また、このフレームワークでは、戦略策定の指針として「What(何を)」「Who(誰が)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」「When(いつ)」という5つの問いが使用されています。各タスクを1つの問いに絞ることで、戦略の重要なコンテキストを見逃すことなく、チームやステークホルダーにプロセスを体系的に提示することができます。
それでは早速、見ていきましょう。
1. What(何を):製品のビジョンを定義する
前述のレストランの例で説明したように、製品ビジョンのステートメントは製品戦略に影響します。
製品ビジョンを作成してから製品戦略を策定することで、焦点を絞り込み、ユーザー中心の選択が可能になります。教師向けの授業計画アプリを例に考えてみましょう。明確な製品ビジョンがない場合、以下のような複数の製品戦略が策定される可能性があります。
教師が学区の締め切りと州のテストを管理するためのカレンダーアプリを作成する
教師と保護者が今後の課題についてコミュニケーションをとるためのアプリを作成する
教師が複数のデータソースから授業計画を迅速かつ簡単に作成できるアプリを作成する
これらの製品戦略は、それぞれの対象者にとって価値がありますが、目的が異なります。そのため、戦略を切り替えることは、製品とポジショニングの根本的な変更を意味します。
例えば、教師が仕事のバランスをとり、事務作業に費やす時間を短縮できるように支援することが企業の製品ビジョンである場合、チームは3番目の製品戦略に重点を置くことになります。
✋ 製品ビジョンのステートメントをまだ策定していない場合は、以下を参考にしてください。
製品ビジョンは、製品チームと組織が製品を通じて解決したい顧客の課題を定義します。では、製品ビジョンのステートメントとは、どのようなものなのでしょうか?
チームによっては、以下のような文章の空欄を埋めてステートメントが作成される場合があります。
[顧客ニーズ]が必要な[ターゲット顧客]向けの[製品]は、[独自のメリットとセールスポイント]を提供する[製品のカテゴリーまたは説明]です。[競合製品や既存の手法]とは異なり、当社の製品では[主な差別化要因]が可能です。
また、製品ビジョンを基に、ユーザーによる製品の利用方法に関するストーリーが作成されることもあります。
2. Who(誰が):製品ペルソナを作成する
製品戦略では、ユーザーや顧客に関する以下の要素を含む製品ペルソナを詳しく設定する必要があります。
目標
役割
視点
好み
例えば、授業計画アプリに「トニー先生」というペルソナが設定されているとします。トニー先生はすでに時間に追われているため、反復的な作業を軽減するアプリの習得期間を短縮する必要があります。州や学区のガイドラインを自動的に統合する授業計画アプリは、独自の指導アイデアと必須の標準カリキュラムのバランスをとらなければならないトニー先生にとって魅力的です。
顧客を満足させ、目標達成を支援する製品を構築するには、顧客を理解することが不可欠です。幸い、憶測したり、ユーザーに関する情報を映し出す水晶玉を探す必要はありません。必要なデータを得る方法があるためです。
顧客管理チームは、ヒートマップやセッションリプレイなどのデジタル体験分析ツールを活用することで、顧客が製品をどのように体験しているかを正確に把握するのに役立つデータを取得できます。
ヒートマップは、製品コンテンツの中で最も人気のある(ホット)要素と人気のない(コールド)要素を、赤から青のスケールで視覚化します。これにより、ユーザーがどの部分をクリック、スクロール、無視しているかを把握できます。
一方、 セッションリプレイでは、ユーザーが製品やサイトを操作している様子を観察できます。まるで肩越しに覗いているかのように、ユーザーがスクロールしたり、マウスを動かしたり、ナビゲートしたりしている様子を正確に確認できます。

Contentsquareで作成されたこのヒートマップのように、ユーザーがページ上でクリック、スクロール、ホバーした場所が分かります。
製品戦略を策定する際、デジタル体験分析ツールを以下のように活用できます。
ヒートマップを分析し、商品ページでユーザーが関心を持つ独自のセールスポイントを理解する
セッションリプレイを確認し、ユーザーが製品やウェブサイトをどのように操作しているかを把握する
ユーザーインタビューを実施し、ユーザーが直面している最も差し迫った問題を理解する
📌 顧客に関するあらゆるインサイトを一元化
ユーザーを理解し、ユーザーに気に入ってもらえる(そして推奨してもらえる)製品を開発するためには、ユーザーに関する定性データと定量データ の収集が不可欠です。例えば、ヒートマップやセッションリプレイ、アンケートからデータを収集し、さらに、重要なユーザー指標を表示する製品ダッシュボードを作成し、その上、ユーザーインタビューを実施するという賢明な選択をしたとします。
これらはすべて、ユーザーを理解する上で非常に貴重な情報ですが、すべてのデータポイントを通じてパターンを見つけ出し、それらをまとめて実用的なインサイトを導き出すにはどうすればよいでしょうか?
成功につながる戦略は、Contentsquare(当社のソリューションです👋)のように、上記の機能をすべて備えた包括的なエクスペリエンス・インテリジェンス・プラットフォームを活用し、必要なあらゆるユーザーデータを収集して一元管理することです。
これにより、客観的な数値(製品ダッシュボードで収集されるユーザー指標など)と、その数値の意味の背景(関連するセッションリプレイや、一対一のユーザーインタビューを実施してユーザーの行動について質問することで得られる情報)を簡単に結び付けられるようになります。
3. Why (なぜ):独自のセールスポイントを特定する
ユーザーについて、そして自社製品が解決できる問題について理解したら、次は競合製品に目を向けます。おそらく、自社のターゲット層向けに同様の製品を開発している企業は自社だけではないはずです。そのため、競合製品と差別化を図る必要があります。
独自のセールスポイントとは、自社製品と競合製品を区別する特性を意味します。
製品を位置付ける一般的な方法として、以下が挙げられます。
低コスト
ユーザビリティの向上
より多くの機能
ニッチな焦点
より優れたカスタマーサービス
イノベーションとアップデート
私たちの製品ペルソナであるトニー先生と、「教師が仕事のバランスをとり、事務作業に費やす時間を短縮できるように支援する」というビジョンを思い出してみましょう。競合アプリに操作が難しい機能が多数ある場合、改善された製品体験が独自のセールスポイントになります。
例えば、より直感的なユーザーインターフェースを採用し、簡単に授業を計画できるようにすることで、オプションや手順が多すぎてプロセスに時間がかかる従来のプロバイダーよりも有利になります。
プロのヒント:ユーザーからのフィードバックを収集することで、継続的な発見と、独自のセールスポイントを定義するのに役立つ定性・定量データを得ることが可能になります。例えば、プロダクト・マーケット・フィット調査によって、自社製品と競合製品の差別化要因を理解し、ページ上に設置したフィードバックウィジェットを通じて、ユーザーに好まれるコンテンツや体験を把握できます。
Contentsquareは、ニーズに合わせて調整できるプロダクト・マーケット・フィット調査向けのテンプレートを提供します。
4. How(どのように):計画を共有する
ユーザーに関する情報を収集したり、ユーザーとやり取りしたりするグループは、製品管理チームだけではありません。他のチームからも貴重なインサイトが得られます。各部門にはそれぞれ独自の経験とユーザーインサイトがあるため、ステークホルダーと連携し、得られた知見を統合してプロダクト戦略を策定しましょう。
例えば、教師が他の教師からアイデアを得ることを推進するキャンペーンでエンゲージメントが高いことにマーケティングチームが気づいていることを、製品管理チームが知らない状況を想像してみてください。ユーザーインサイトをチーム全体で共有することで、チームは戦略においてコミュニティの側面を優先する必要があることを認識できます。以下では、製品戦略の策定において、ステークホルダーと連携する3つの方法を紹介します。
分野横断的なチームを作成します。部門ごとに分かれて作業するのではなく、特定のペルソナまたは製品に焦点を当てた部門横断的なチームを作成しましょう。
セッションリプレイをチーム間で共有します。他部門のチームは、ユーザーがどのように製品を操作しているかを直接確認できるようになることで、ユーザーに寄り添い、優先事項を一致させられます。Contentsquareを使用してセッションリプレイを収集している場合は、Slackに接続して、簡単に同僚に送信できます。
ユーザーインサイトについてチームメンバーをタグ付けします。新しい発見について他のチームをタグ付けするなど、頻繁かつ気軽に情報を共有することで、コラボレーションが習慣化され、全員の足並みが揃います。
ユーザーインサイトを共有して同僚から学んだら、それらすべてを製品戦略ステートメントにまとめます。その際、2つの方法があります。
ひとつ目は、以下のように、製品戦略フレームワークの問いの横に、知っていることを書き込む方法です。
何を:教師が事務作業に費やす時間を減らせるように、仕事のバランスをとることを支援する。
誰が:「トニー先生」は時間に追われているため、反復的な作業を減らせるアプリを短期間で習得する必要がある。
なぜ:すべての人を対象に、すべてを可能にしようとしてトニー先生に負担をかけている従来のプロバイダーに比べ、より直感的なインターフェースによって時間を節約できることは有利になる。
2つ目の方法は、「___ するために ___ を解決する、___ のための ___ を作成する」のようなステートメントを使用することです。授業計画アプリの例では、以下のようになります。
「反復的な作業に費やす時間を減らす必要がある教師のために、ガイドラインを管理して授業計画を迅速に作成できる授業計画アプリを作成する」
5. When(いつ):優先順位を決定し、テストとイテレーションを実施する
製品戦略を策定したら、次は、その戦略に基づいて製品ロードマップを作成します。
例えば、授業計画アプリの例で、「教師が複数のデータソースからシラバスを迅速に作成できるようにすること」を製品戦略として設定したとします。この場合、製品管理チームにとって、保護者と教師のためのメッセージング機能よりも、インテグレーションの構築が優先されます。インテグレーションは製品戦略に直接関係するため、製品管理チームは、インテグレーションをロードマップに確実に組み込む必要があります。
次に取り組むべきことを決定したら、製品戦略フレームワークの最終ステップは、デザイン思考に基づくテストとイテレーションの実施です。製品戦略に基づいて優先度の高い新製品ごとに新たな仮説を立て、プロトタイプを作成し、ユーザーを使ってテストを実施します。
例えば、授業計画アプリのチームは、教師が利用しながら貢献できる授業計画データベースのプロトタイプを作成します。次に、ユーザーテストを実施し、教師に気に入っている点や不満な点を尋ね、リプレイを確認してユーザーがつまずく場所を把握します。最後に、製品管理チームがこうしたインサイトを活用して製品を改良し、より優れたユーザー体験を実現します。
Contentsquareのユーザーテスト・ツールによって、プロトタイプのユーザーテストの参加者を簡単に募集してテストをホストし、リプレイを確認できます。
ユーザーに合わせて製品戦略を進化
製品戦略を一度決定するだけで済めば、少し飽きるかもしれませんが楽でしょう。しかし現実には、ユーザーと製品は常に変化しているため、製品戦略フレームワークを見直す必要があります。
製品戦略を維持すべき期間についてのタイムラインはとくに決まっていません。あまり頻繁に変更したり、製品戦略が適切であると想定してユーザーインサイトを発見できないリスクを冒したりすることは避けましょう。
市場調査と顧客体験の分析は、適切なバランスをとりながら製品戦略の調整を行うための鍵となります。例えば、離脱の意図調査や顧客離れに関する調査を実施することで、顧客がサービスの利用を止める理由を明らかにすることができます。特定のユーザーセグメント全体が製品を必要としなくなった場合、製品戦略の対象者(Who)と理由(Why)を再検討すべき時期が来ていると判断できます。
好奇心と進歩へのコミットメントがあれば、ユーザー中心の製品開発がはるかに容易になります。ユーザー体験分析の結果を確認し、ユーザーに寄り添うことを習慣化することで、継続的な細かい修正が可能になります。こうした小さな変化を通してユーザーについて学びながら製品を調整できるため、数年後にユーザーのニーズから大きく逸脱していることに気づいて製品の全面的な改修を余儀なくされる事態を避けられます。

![[Visual] Contentsquare's Content Team](http://images.ctfassets.net/gwbpo1m641r7/3IVEUbRzFIoC9mf5EJ2qHY/f25ccd2131dfd63f5c63b5b92cc4ba20/Copy_of_Copy_of_BLOG-icp-8117438.jpeg?w=1920&q=100&fit=fill&fm=avif)

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