ランディングページを最適化したいとき、ABテストは改善のアイデアを評価するための最も実践的な方法です。このガイドでは、ABテストを実施する方法を丁寧にご紹介します。それによって、ユーザーについて多くのことを学ぶこともできます。
ランディングページの最適化は、コンバージョンの向上、収益の増加、CPA(顧客獲得単価)の削減に役立ちます。しかし、戦略なしに「すべてをABテストしよう」としても、時間がかかるだけで効果は得られません。
その代わりに、明確で再現性のある6つのステップに基づいた計画的なプロセスで、ABテストを行いましょう。
ランディングページのABテストを6つのステップで行う方法
テストしたい各ページごとにこの手順を順番に実行し、意思決定の記録を残しておくことで、チーム内でもナレッジを共有できるようにしましょう。
1.明確な目標を設定する
まず、ABテストによって何を達成したいのか、そしてそれがビジネス全体の目標とどうつながるのかを明確にしましょう。
なぜテストしたいのでしょうか? 例えば、ページのパフォーマンスが業界平均を下回っている、あるいはユーザー体験に課題がありそうだと感じた場合が考えられます。「もっと成果を出したい」という理由でももちろん構いませんが、1つのページで改善できる範囲には限界があります。
改善したい主な指標は何ですか? 通常、ランディングページでは「カートに追加」や「今すぐダウンロード」などの主要コンバージョンを改善することが目的になります。ただし、テストの目的によっては、直帰率やフォームの初回クリック数といった別の指標を改善すべき場合もあります。
また、どのくらい改善すれば満足かという「目標の水準」も決めておきましょう。そうでないと、無限にテストが続いてしまい、他に注力すべきページが後回しになります。
最後に、ABテストは十分なトラフィックがある場合にのみ統計的に有意な結果が得られます。A/Bテスト用のサンプルサイズ計算ツールを使って、必要なサンプル数やテスト期間を見積もりましょう。
2.データ収集
ランディングページで変更できる要素は数えきれないほどあります(後ほど具体例も紹介します)。
では、何を変更すべきかどう判断するのでしょうか? ページ要素を無作為に変更してテストするのは非効率です。たとえ偶然うまくいっても、なぜそのバージョンが良かったのか分からなければ、今後に活かせません。
代わりに、ユーザーの視点や行動に関するデータを集め、戦略的に進めましょう:
分析ツールで主要指標を確認する
たとえば、Google アナリティクス4の「平均ページ滞在時間」を見れば、ユーザーがコンテンツを読んでいるのか、すぐに離脱しているのかがわかります。その他にも、コンバージョン率がサイト全体のベンチマークと比較してどうかを見ましょう。
ページ上でのユーザーの行動を知る
ここで、Contentsquareのようなエクスペリエンスインテリジェンスプラットフォームが役立ちます。ゾーン別ヒートマップを使って、ユーザーがどこをクリックし、どこまでスクロールしているかを確認しましょう。重要な部分まで届かずに離脱していないか、クリックできない要素をクリックしていないか、といった点から、UIの直感性が評価できます。
ユーザーの視点と経験を深く掘り下げる
コンバージョン改善を図るには、ユーザーのニーズや思考の深い理解が不可欠です。特に以下の3点を把握することが重要です:
ドライバー訪問のきっかけ
障壁離脱につながる障壁
フックコンバージョンを促す要素
こうした調査を行っていない場合は、キャンペーン対象商品のユーザーに直接インタビューするのがおすすめです。対象ユーザーをリクルートし、インタビューを行いましょう。
さらに、ドライバー、バリア、フックに関する明確な質問を盛り込んだアンケート調査を実施しましょう。ただし、これらのアンケートはキャンペーンのランディングページ上には設置しないほうが良いです。ユーザーの集中を妨げ、コンバージョンに悪影響を与える可能性があります。
プロのアドバイス:ヒートマップやセッションリプレイツールを活用してユーザージャーニーを可視化し、アンケートを設置する最適な場所を見極めましょう。
ヒートマップではユーザーの注目エリアが、セッションリプレイではユーザーがどこで苛立ち、離脱しているかが分かります。これにより、離脱時アンケートを設置すべきページを判断できます。

アンケートを活用して、ランディングページやその他のコンバージョン改善に必要なフィードバックを収集しよう。
3.テスト仮説を立てる
これまでにさまざまなデータを収集し、ユーザーの行動や認識についてある程度理解できたはずです。次のステップは、その理解に基づいて「このページを改善できそうな仮説」を立てることです。
有効な仮説とは、「テスト可能」であり、「信頼できるデータや観察結果に基づいている」ものです。仮説では、改善案とその結果を予測し、その理由をユーザー理解に基づいて説明します。たとえば、次のようになります:
「このページにおいて、ユーザーの主目的に関係のないボタンを削除すれば、主なCTAからの注意がそがれなくなり、コンバージョン率が向上するはずである」
このように、仮説はこれまでのステップで得られたインサイトに基づくべきです。つまり、すでにある程度「どのように改善すれば良いか」を見通せている状態であり、ABテストはコンバージョン最適化の最終確認であるべきです。
この段階では、追加・変更・移動・削除したい要素が1つ以上明確になっているはずです。
コンテンツスクエア🤝NatWest:ユーザーエンゲージメントに基づく仮説の成功例
イギリスのリテールバンクNatWest社は、Contentsquareを使って、自社モバイルアプリの貯蓄ハブページを分析しました。その結果、ユーザーがかなり下までスクロールした後に離脱していることが判明。このページはNatWestの多くのユーザーが最初に訪れる導線だったため、早急な改善が求められました。
NatWest社チームは、このハブページのデザインには、ユーザーが求めている主要な情報が不足しているのではないかという仮説を立てました。 この仮説をもとに、より簡潔でスキャンしやすい「Fixed Rate ISAカード(定期預金型商品紹介カード)」を新たに掲載したページを作成し、テストを行いました。

NatWestのモバイルアプリ「貯蓄ハブページ」におけるABテスト
Contentsquareの機能でオリジナルバリアントと新バリアントを並べて比較したところ、応募を完了したユーザー数が大幅に改善されたことが確認されました。
このシンプルなABテストと得られたインサイトのおかげで、NatWestは顧客体験において実際に大きな変化をもたらすことができました。
4.テストしたい新しいランディングページの要素を準備する
通常は、以下に挙げるランディングページの要素のいくつかを変更することになるでしょう。ただし理論上は、ページ上のどんな要素でもコンバージョンに影響を与える可能性があります。
⚠️ 1つのテストで変更する要素が多ければ多いほど、どの変更がテスト結果に影響したかを理解できなくなることを忘れないでください。
見出し
効果的な見出しは、訪問者の関心に訴えかける“約束”や“悩みの解決”を提示することで、ページを読み進めたくなるように引き込みます。また、ページ全体のコンテキストを設定し、他の要素がそのストーリーに沿って展開されるため、非常に重要な役割を担っています。

Planable社のランディングページのヘッドラインは、製品が提供する価値を明確に約束している例です
見出しをテストする
調査結果から、現在のヘッドラインがユーザーに響いていない、あるいはユーザーの動機や悩みに結びついていないことが分かったとき
アナリティクスでページ滞在時間が短いと示されているとき(=ヘッドラインがユーザーを惹きつけていない可能性がある)
小見出し
多くのユーザーはページを最初から最後まで読むのではなく、ざっとスキャンして重要な部分だけ拾います。 そのため、サブヘッドラインでは、ストーリーの要点や主要な訴求ポイントを端的に伝える必要があります。
小見出しが明確でなかったり、説得力がなかったりする場合は、テスト仮説に沿って新しいバリアントをテストすることを検討しましょう。
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「小見出しは、メインのヘッドラインに次いで重要です。『機能』や『私たちを選ぶ理由』のような汎用的な見出しをそのまま使っているなら、もっと製品の魅力が伝わるものに置き換えることを検討しましょう。たとえば『Features』を『ワークフローを最初から最後まで自動化』に変えるだけで、伝わる価値がまったく違ってきます。サブヘッドは、主要なメリットを伝えるか、続きを読ませたくなるように設計すべきです」
Jon Evans
コピーライター
本文コピー
本文は、製品やサービスの詳細を、もっと知りたいと思っているユーザーに伝える重要な部分です。 マーケターはヘッドラインほど頻繁には本文をABテストしませんが、説得力のあるセールス文はコンバージョン率を改善する可能性があります。以下の観点で変更を検討してみましょう:
長さ
読みやすさ(長い文章を箇条書きにするなど)
焦点(どの機能・ベネフィットを中心に説明するか)
画像とビデオ
画像や動画は、ユーザーの注意を引きつけ、製品の重要な情報を直感的に伝える手段です。
訪問者がすぐに離脱している場合は、ページ上部に動画を追加し、興味を引きましょう。
テキストばかりのページであれば、視覚的に内容を伝える画像を追加するのも効果的です。
すでに画像がある場合は、その画像を変更してみるのも一手です(ヒートマップを使えば、ユーザーがどのように画像と関わっているかがわかります)
🏆 プロのように最適化する
「クリックできない画像にユーザーが頻繁にクリックしている」ヒートマップが見つかったら、それはユーザーがもっと知りたがっているサイン。そのトピックに関する情報を追加するか、画像を動画に置き換えてみましょう。
価格と情報表
もし、ユーザーがもっと具体的な情報(価格やプランなど)を必要としている兆候が見られるなら、情報表を新たに追加するか、既存の表をより目立たせる工夫をしてみましょう。一方で、ユーザーが情報量に圧倒されている可能性がある場合は、ボタンで表示・非表示を切り替えられる「折りたたみ式の表」にすることも有効です。

ECサイト「Katin」は、商品ページにあるリンクの奥にサイズチャートを隠しています
CTAボタン
CTAボタンはページのほんの一部かもしれませんが、間違いなく最も重要なコンバージョン要素です。以下の観点でテストを検討してみましょう:
色と形
ページ上の位置
コピーライティング
ボタンの数(複数種類のCTAを使う vs 同じCTAを繰り返す)

HubSpot社は、CTAボタンに注意を引くオレンジ色とシンプルな文言を使用しています。
信頼の要因
クライアントロゴ、受賞歴、顧客の声(テストモニアル)などは、訪問者がページを信頼するかどうかに大きく影響します。 ただし、これらを詰め込みすぎるとページが雑然としてしまう可能性もあるため、ユーザーが圧迫感を感じているというデータがあれば、表示数を絞るなどの調整を検討しましょう。
フォーム
コンバージョンに関する数多くの調査で、「フォームのUX設計」が成果に大きな影響を与えることが示されています。 ユーザーがフォームを見つけたり入力したりする際の“摩擦”を減らすことが、成果を大きく左右します。 以下の要素でテストを行うと良いでしょう:
フォーム項目数の見直し
文言や配置場所の変更
信頼性の訴求(例:セキュリティやクレジットカードのロゴなど)

Membership Workshopでは、フォームはメインのCTAボタンをクリックするまで表示されないようになっています。
ページ構成
ページに必要な「材料(コンテンツ要素)」がすべて揃っていたとしても、それらの見せ方(順序や配置)を変えることで成果が変わる場合があります。 以下のような構成変更をABテストしてみましょう:
主要なセールストークの順序(機能説明など)
フォームとCTAボタンの配置
特別オファーやキャンペーン情報の掲載位置
スクロールマップを使えば、ユーザーがどこまでスクロールしているかを一目で把握でき、重要な要素が実際に見られているかどうかを確認できます。

Contentsquareグループの一員であるHotjarのスクロールマップでは、「青系の色」が、ページ下部までスクロールしたユーザーが少ないことを示しています
5.テストの設定
新しいページ要素の準備が整ったら、ランディングページビルダーで「Bバリアント」を作成しましょう。 トラフィックに十分なボリュームがある場合は、複数バリエーションを用いた多変量テストも可能です。
技術的な環境に応じて、AB Tasty や Optimizely のようなABテストツールと接続することをおすすめします。 これらのツールを使えば、訪問者を自動で分割し、各バリアントのパフォーマンスを測定できます。
最後に、Contentsquareのようなオールインワンのデジタル・エクスペリエンス・プラットフォームをセットアップしましょう。ヒートマップやリプレイのような機能を使えば、ユーザーが各ページのバリアントで何をしているかを詳しく調べることができ、定量的なデータに定性的な理解をもたらすことができます。
有意義な結果を得るためには、テスト期間を十分に設けることが重要です。 テスト期間が短すぎると、十分なデータが収集できず、「ノイズ」が多すぎて結果に意味がなくなる恐れがあります
(💡不明な場合は、ステップ1で使用したABテスト計算機の推奨を確認してください)
プロのヒント:ABテストのデータをContentsquareと統合しましょう。
Contentsquareとテストツールを統合することで、あるページバリアントが他のページバリアントよりも優れている理由を知ることができます。
たとえば、AB Tastyとの連携では、実験結果にビジュアルなインサイトの層を追加できます。 そのため、どのテストが成功したかだけでなく、なぜ成功/失敗したのかも把握でき、次の施策につなげられます。
Contentsquareの先進的な分析機能は、ユーザー行動を深く・本質的に理解するためのインサイトを提供します。また、AB Tasty は、そのインサイトを活用してリアルタイムで施策を打つ力を与えてくれます。この両者を組み合わせることで、ユーザーのカスタマージャーニー全体を360度の視点から把握できます。
Contentsquareのゾーニング分析は、AB Tastyの強力な実験およびパーソナライズ機能と連携し、2つの異なるテストバリエーション、デバイス、指標、または顧客セグメントを比較します。
これにより、訪問者がデフォルトと異なる行動をとった理由と方法を理解するための、簡単で分かりやすいデータが得られます。
![[Visual] File — two-columns-feature-placeholder-1 - Zoning experience and revenue attribution](http://images.ctfassets.net/gwbpo1m641r7/5ELMCzDenXvDdRmgYUkfyO/019e4a34ebb968bbf30f10165416decb/Experience_and_revenue_attribution.png?w=3840&q=100&fit=fill&fm=avif)
Contentsquareのシングルビューでのサイドバイサイド分析は、ABテストのゲームチェンジャーです。
6.テストデータを見直す
ABテストツールで、どちらのページバリアントがコンバージョン率(または改善を目指した主要指標)において勝ったかを確認しましょう。
もし新しいバリアントが明確に勝っていれば、オリジナルバリアントを置き換えるのが良いかもしれません。次の対象ページに進んでさらなる最適化を進めましょう。 あるいは、勝利したバリアントを新たな「A」バリアントとして採用し、さらに新しい「B」バリアントで次のテストを実施するのも効果的です。
忘れないでください: 「なぜそのバリアントが勝ったのか」を理解することが重要です。 ここで定性的データ(例:ヒートマップ、セッションリプレイ)が力を発揮します。
例えば
CTAを変更した場合、新しいバリアントはページバリアントでより注目されましたか、それともより注目されませんでしたか?
CTAの配置を変更した場合、ヒートマップでユーザーが新しい位置に到達し、クリックしていたか?
テストが成功しなかった場合はどうなりますか?
BババリアントAバリアントに勝てなかったとしても、それは「失敗」ではありません。あなたの仮説が間違っていたという貴重な学びを得られたのです。つまり、ユーザーが反応する要素・しない要素が明確になったということです
各テストを最大限に活用するために
各バリアントで何を変更し、結果がどうだったかを記録しておくこと。これにより、チームメンバーが将来的に過去のテスト結果を参照しやすくなります。
ページのパフォーマンス指標やユーザー行動データを分析し、「なぜ成果が出なかったのか」を探ること。 セッションリプレイで、ユーザーが新しい要素に混乱していたり注意をそがれていたりしなかったか? ヒートマップで、ユーザーが新しいCTAボタンまでスクロールしていたか?
多くの場合、答えはすでにデータの中にあります。 少し「探偵ごっこ」をするだけで、次のABテストをもっと成功させるヒントが得られます。
ユーザーをABテストプロセスの中心に置く
ABテストはとてもワクワクするプロセスで、新しいバリアントが旧バリアントを大きく上回ったときの喜びは格別です。 ですが、ABテストを目的化しすぎて、本来の目標を見失わないようにしましょう。 本当に目指すべきなのは、「より良いユーザー体験の創出」です。
ユーザーが求めているのは、完璧に最適化されたページではなく、スムーズに必要な製品・サービスにたどり着けることです。だからこそ、ランディングページを最適化する際は、最初から最後まで「ユーザー理解」から始めることが何よりも大切です。 ユーザーの「訪問理由」「離脱理由」「引き込み要素)」を深く理解すればするほど、 正しいABテストの判断ができるようになります。