三井ダイレクト損害保険株式会社では、デジタル顧客体験分析プラットフォーム「Contentsquare(コンテンツスクエア)」を2023年から利用しています。1年間活用したことで見えてきたContentsquareの価値とは?—— 選定・導入から社内での活用・浸透まで担うキーパーソンに詳しく聞きました。
◆お話をうかがった方
三井ダイレクト損害保険株式会社
マーケティング部 デジタルマーケティンググループ
(写真向かって左から)
マネージャー 横田 祐樹氏
チーフスタッフ 北川 智貴氏
アシスタントマネージャー 中原 あかね氏
アシスタントマネージャー 内藤 麻衣氏
グループマネージャー 相川 淳之介氏
(※所属・肩書は2024年5月時点のもの)
事業紹介
——三井ダイレクト損保の事業と、マーケティング部デジタルマーケティンググループについて教えてください。
当社、三井ダイレクト損害保険株式会社(以下、三井ダイレクト損保)は、MS&ADインシュアランス グループの一員として、新たな商品・サービス・販売スタイルの導入などのパイロット的役割を担っています。
事故時に自動でオペレーターにつなぐ「レスキュードラレコ」や個客に最適化された情報提供を行うためのデータ分析など、デジタル技術を積極的に取り入れる一方、専門スタッフによる手厚いサポートも提供、ネット型保険(通販型・ダイレクト型)ならではのコストパフォーマンスの高さと、代理店型に引けを取らない手厚いサービスを両立させています。
当社のウェブサイトを運営するマーケティング部デジタルマーケティンググループでは、「見やすく、わかりやすく、使いやすいウェブサイト」の実現をミッションに掲げ、日々サイト改善に取り組んでいます。集客からお申し込みまで、ウェブサイトが担う役割は大きいだけにそれは新規顧客の獲得に直結する重要な要素と言えます。
——サイト改善に日々取り組まれているなかで、どのような課題をお持ちでしたか。
Google Analyticsなどを用いたアクセス解析を行っていましたが、ユーザー行動の課題に対して仮説を立てるにあたって、既存ツールから得られた示唆以外にも、もっとユーザー心理を推し量る方法がないか模索していました。
たとえば、見積もり結果の画面で離脱率が高いという課題がありました。しかし、従来のアナリティクスで取得できる数値のデータだけでは、「なぜそこで離脱するのか?」という理由まではわかりませんでした。お客さまの行動を、なんとか見られないかと模索していたところでContentsquareに出会いました。
「使いやすいサイトを作るためには、細かくセグメントを分けて分析するのが重要です」と語る三井ダイレクト損保 チーフスタッフ 北川 智貴氏
解決策
——Contentsquareを選んだ理由を教えてください。
特に、クリックやスクロールなどの行動からユーザーがページ内のどんな要素にどれだけ反応しているかを視覚的に確認できる「ゾーンベースのヒートマップ」、個々のユーザーのウェブサイト閲覧の様子を記録・再生できる「セッションリプレイ」といった機能に魅力を感じました。これらの機能を単独ではもちろん、連携させて使うこともでき、改善のための具体的なアクションを導き出せることが強みだと感じています。
——実際に1年活用して、どのような価値を感じていますか。
まず、導入前の課題であった、Google Analyticsでは読み解ききれない部分の分析と改善ができるようになりました。セッションリプレイでユーザー行動を“見る”ことで、ユーザー心理を自分ごととして捉えられるようになったんですよね。「こうしたらユーザーにもっと喜んでもらえるかも」と考えて施策を検討でき、その施策の結果が出るのも楽しみになりました。サイトの改善に対して、今まで以上に前向きに取り組めるようになったのは大きな変化だと思います。
「仕事が楽しくなった」と述べる三井ダイレクト損保 アシスタントマネージャー 中原 あかね氏(写真右)
導入後に気づいた魅力は、セグメント作成のしやすさです。「このボタンを2回タップした人」といった細かなユーザー行動に基づくセグメント分けができるのが便利です。他にも、「保険の契約自体が初めて」か「他社からの乗り換え」か、といった分け方も分析に活用しています。乗り換えの方と比較して新規の方は「用語集」への遷移率が高い、といった細かい分析ができるので、今までよりも精緻な仮説を立てPDCAを回すことに繋がりました。
1年間活用してみて、非常に有益なツールであると実感しています。コンバージョン率の上昇をもとにビジネスインパクトを換算した時に、確実にパフォーマンスが上がっています。
「試験的な導入を通じて、確実にパフォーマンスがでることを実感した」と述べる三井ダイレクト損保 グループマネージャー 相川 淳之介氏
分析事例:タップ数に注目してフォームを改善。コンバージョン率が2%上昇
お客さま情報登録画面において、電話番号入力のフォームを改善した事例です。Contentsquareのセッションリプレイから、このフォームでユーザーの多くがゆっくりとハイフンを入力していることに注目しました。そこで入力項目の再クリック数を確認したところ、電話番号入力欄の再タップ数が他項目よりも多いことが判明しました。ここから、ハイフンを入力しないとエラーが表示されるにもかかわらず、そのメッセージがユーザーに伝わっていない可能性があるという仮説を立てることができました。
そこで検証のため、次の2つのセグメントを設定しました。
電話番号入力欄を1回クリック(望ましい行動)
電話番号入力欄を2回以上クリック(エラーが発生する行動)
この両者について比較分析した結果、電話番号を複数回クリックするとコンバージョン率(CVR)が下がることが明らかになりました。
これは、エラーが発生したものの、ユーザーがなぜエラーになっているのかを理解できておらず、適切に対応できていない可能性が高いことを示唆しています。
そこで、対策として「お客さまがハイフンを入力しなかった場合、自動でハイフンを生成する機能」を追加しました。
この対策についてABテストを実施したところ、ハイフンを自動生成するフォームの方が、約2%コンバージョン率が高い結果になりました。
こうした顧客体験上の課題は、既存ツールで取得していた定量データだけでは発見が難しかったと同社は振り返っています。定量データと定性データを組み合わせた分析の重要性が、この事例から明らかになりました。
いままで以上に”ユーザビリティ”を意識したデジタル顧客体験を
——最後に今後の展望を教えてください
今年度に取り組みたいことが大きく2つあります。
1つ目は他部署への横展開です。
最初の1年間で、1番インパクトの大きい「新規のお客さま獲得」のサイト改善にContentsquareを活用したところ、確実に効果を発揮することがわかりました。この結果を踏まえて、他部署にも横展開したいと考えています。既存ユーザーが当社サイトに訪れるのは、年に1回程度です。つまり、更新のタイミングでしかサイトに訪れません。その時サイトに対して不便を感じると、契約更新をしないお客さまがでてきてしまいます。長くお客さまとお付き合いしたいからこそ、その1回の訪問が「良いデジタル体験」になるよう、日々改善していく必要があると考えています。
2つ目は、「コールセンターにお問い合わせをしなくても、ウェブサイト上で自己解決できる」という顧客体験を強化するためにContentsquareを活用していくことです。
当社の商品に関する手続きはインターネット上で完結できますが、Web手続き上で問題が発生した場合など、お電話でお問い合わせをいただくこともあります。お客さまがサイト上でつまづいているポイントを解消していくことで、電話でのお問い合わせを減らし、顧客満足度とオペレーター効率の両立を目指していきます。
——ありがとうございました。